『標的』の制作と作品内容はこれまでメディアの高い関心を集めてきました。報道された記事の中から代表的なものを紹介させていただきます。


韓国英字紙で大きく取り上げられました

韓国の英字新聞「The Korea Times」の2021年10月15ー17日号で「標的」が大きく取り上げられました。

「なぜ、日本のメディアは、戦時性奴隷制の問題を封じようとしないのか」という見出しがついています。


記者を標的の攻撃、日本のメディア状況描く

(2019年9月の朝日新聞記事から)

特定のメディアや個人を狙う攻撃が繰り返され、多くのメディアが萎縮し、沈黙する。そんな日本のメディア状況を描きたいと、元RKB毎日放送(福岡)ディレクターの映像作家、西嶋真司監督がドキュメンタリー映画「標的」の製作を進めている。この映画に力を注ぐため、長年勤めたテレビ局を離れた。

 

 西嶋さんは戦争や人権をテーマにテレビ番組を数多く製作。朝鮮人強制連行や公害問題などで多くの著書を出した記録作家・林えいだいを描いた映画「抗(あらが)い」で平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞を受賞した。

 

 今回の主人公は、元朝日新聞記者で「週刊金曜日」発行人兼社長の植村隆氏(61)。朝日新聞が2014年に慰安婦問題で一部記事を虚偽と認めて取り消した際、植村氏の記事は訂正や取り消しの対象外だったが、ネットや電話で非難が集中。勤務先や家族も脅迫された。

 

 西嶋さんは植村氏が元慰安婦の記事を最初に書いた1991年から3年間、ソウル特派員だった。「私を含め、当時ソウルにいた記者はみな慰安婦問題の記事を書いた。20年以上たって彼だけが標的にされ『捏造(ねつぞう)』と攻撃されるのはおかしい」と撮影を始めた。

 

 東京と札幌で植村氏が起こした裁判のほか、植村氏が韓国で元慰安婦と会う場面や、札幌で母をみとった場面も撮った。テレビ番組にまとめる予定だったが、国内で慰安婦問題の番組を放送するのは極めて難しいという。「作品を完成させず勤め続けても後悔する」と、定年後の延長雇用を打ち切る形でテレビ局から離れ、映画づくりに専念。「バッシングの背景を解明したい」

 

 昨年11月、世界のドキュメンタリー製作者やメディア関係者が東京に集まる催し「Tokyo Docs」で提案したところ、10社以上から「日本のメディア状況やジャーナリストの人権問題が興味深い。完成したらぜひ見たい」と問い合わせを受けた。

 

 撮影・編集費や録音費、著作権料にあてるため、朝日新聞社のクラウドファンディングサイト「A-Port」で寄付を募った。8月下旬までの4カ月間で約330人から計約470万円が寄せられ、目標額300万円を大幅に上回った。配給会社も決まり、年内にも完成予定だ。「支援に恥じない中身の映画に仕上げ、現代日本で起きている言論へのバッシングがいかに不当であるかを、多くの方に知ってほしい」と話している。(編集委員・北野隆一)